遺贈と相続の違いって
こんにちは、田中 です。
遺贈と相続の違いをご存じでしょうか。どちらも似たような漢字を使用している言葉ですので、意味も似ているのではと思うかも知れません。しかし両者の指す意味は大きく異なります。普段生活している中で相続に関する話題に触れることはほとんど無いと思いますので、意味の違いを理解していなくても無理はないでしょう。とはいえ、意味の違いを理解しておくといざという時に冷静に対応出来るので安心できます。
遺贈は、遺言を遺すことで財産を譲ることを指します。この場合、血縁(法定相続人)かどうかは関係なく、完全に遺言の内容通りに受け取る権利が発生します。
相続は、故人(被相続人)が死去した場合に一定の関係にあった人(法定相続人)が故人(被相続人)の遺産を受け取ることです。血縁関係が重視されますので、多くの場合は配偶者や子供が該当します。
両者の大きな違いは、故人(被相続人)が、遺言で受け取る人を選んでいるかどうかです。遺贈は故人(被相続人)の意思で受け取る人を選択しますが、相続はあくまでも法律で決定されます。漢字や言葉の雰囲気は似ていますが、内容には大きな違いがあります。
遺贈は、故人(被相続人)が遺言によって譲りたいと思った人を指名することで成立しますので、必ず遺言を作成しましょう。 遺言を書くときは、日付と印鑑、氏名の記載を忘れないようにして下さい。一つでも欠けてしまうと正式な遺言として見なされなくなり、遺贈に関して内容を承認してもらえない可能性があります。その場合、一定の関係にあった人(法定相続人)にそのまま権利が移行してしまうので注意が必要です。相続と比べると少し手間がかかりますが、自分が渡したい方に渡すことが可能ということです。個人ではなく団体等に対して行うことも可能です。ユニセフ等の機関や団体の理念に感動し、遺贈を決める方も少なくありません。天涯孤独で財産を相続する人がいない場合にはいい選択肢かもしれませんね。受け取り手のいない財産は国庫に帰属することになります。国庫に寄贈されるなら、自分が信用している団体や機関に寄贈したいと考える方が多いようです。
遺贈に関してのデメリットは、例えば不動産を遺贈したとき、相続人が存在した場合に一緒に手続きを進めなければならないという点です。自分一人で処理が終えられないので、かなりの時間と手間がかかります。法定相続人も一人だけではなく法定相続人全員と一緒に進めることになるため、各々のスケジュール調整だけでもかなり気の遠くなる作業になるでしょう。また、相続の場合は不動産の登記が終了していなくても権利を主張できますが、遺贈の場合は登記をするまで権利を主張できません。さらに相続税が2割増しになります。法定相続人と比較すると余分に税金を支払うことになるので、少し損をする可能性もあることを理解しておく必要があります。
相続は、故人と近い血縁にある方が故人の遺産を受け取ることです。特に手続きを行わなければ、故人の遺産は相続人の共有となります。この際に重視されるのは相続順位です。高い順位にあるのは、配偶者と子供、その次に両親、兄弟姉妹と続きます。 養子や元妻との間に授かった子供なども順位の中に含まれます。養子だから、元妻との子供だからという区別は一切設けられていません。しかし、元妻に関しては相続の対象にはなりません。再婚をしている場合は、現在の妻にのみ権利があります。子供の権利はそのままですが、元妻に関しては権利を失うことになるためややこしく、勘違いする方も少なくありません。思い違いは思わぬトラブルを招くきっかけにもなるため十分に注意しましょう。
遺贈の場合、法定相続人全員と一緒に進める必要があるとお伝えしましたが、法定相続人の場合はそういった問題は発生しません。借地や農地が遺産に含まれている場合、許可などは必要ありません。また、不動産の登記が終了していない段階でも自分の権利を主張できます。遺産を受け取るということに関しては相続が最も権力を持っていると言えるでしょう。
相続のデメリットは、まず故人の財産や債務を全て明らかにしなければならないということです。税制の面や権利の強さなどで優遇はされていますが、相続をするには相続人に認定される人全員の把握と、財産額の把握が必要になります。
相続人の確認が不十分で、万が一遺産分割を終えた後にさらに相続人が判明した場合はやり直さなければなりません。債務が多い場合は相続放棄も可能ですが、それはあくまでもマイナス分が多い場合の対応になるでしょう。 マイナスとプラスのどちらになるのかもわからない状態では判断が難しくなりますね。また、故人の財産と認識されるものを少しでも処分してしまうと、単純承認とみなされますので、相続放棄自体ができなくなります。 相続人になると確認事項や手続きなどが多いので時間や手間がかかりますが、税制的にも権利の強さなどメリットが多いため、デメリットはそこまで気にならないかもしれません。
遺産関連の問題はいざこざが生じやすく、長期化しやすい厄介な問題です。大金が絡むものでもあるため、深刻な問題に発展する可能性もあります。面倒ないざこざに発展してしまう前に、対策を講じておくのがよいでしょう。
生前にしておける工夫も合わせて参考にして下さい。遺言書は必ず作成しましょう。遺贈の意思を表すための重要な書類になることはもちろんですが、相続の割合変更の意思を示しておくことも可能です。相続人に対して渡される遺産は、順位に基づいて算出されるものです。しかし、故人の中で、相続人の中でも渡すものの割合を変えたいと考えているかも知れません。例えば、二人兄弟だった場合、原則相続財産は折半になります。しかし、故人の意思によってその割合を6:4に変えたいと思っているかも知れません。兄弟のうちの片方に介護してもらったから、割合を少し変えたいと考える方は、少なくないでしょう。その場合、遺言に記載を遺しておくと、意思が通る可能性が高まります。 もちろん割合を下げられてしまった方は権利の主張を行うことが可能ではありますが、遺留分に収束していきます。割合の変更ができるのは故人が作成した遺言書だけだということを理解して下さい。
遺贈の際には相手をしっかりと選びましょう。晩年に遺贈目的で近づいてくる人に騙されてしまう可能性があります。 遺贈はとても便利な制度ですが、その制度を知って近づいてくる者も実際には存在しています。話し相手になってくれたから、親切にしてくれたから、と気軽な気持ちで遺贈相手に選択してはいけません。相手を選ぶ際は慎重に、不安があれば周りの方にも相談するようにしましょう。
専門家へ依頼するというのも重要なポイントです。相続に関する手続きは、専門用語や知識が必要です。自分で調べながら書類を作成するのはかなり大変で、時間もかなりかかってしまいます。 専門家に依頼することで、書類作成にかかる時間や手間をかなり軽減することが可能です。書類内容に間違いが生じないように手助けしてくれるので、書類の不備による戻りなどが生じる心配もほとんどないでしょう。 スケジュール管理や分割協議の進行など、精神をすり減らしてしまいそうな作業のサポートをしてもらえるので、負担はかなり軽減するでしょう。費用はある程度かかるものの依頼人の負担が軽減するため、依頼を検討してみてはいかがでしょうか。